ORGAN VITAL Vol.2
AEONアイオーン '92
−胎児は踊る−
アイオーン……アイオーンに由来する
太古の記憶を持つ者……
桜姫の誕生で遺伝子戦争の物語が
そこから始まった……。
作・演出 藤原京
出演 奈佐健臣 長谷川公彦 藤原京 平出龍男 古本隆朗 吉岡成明
塔島昭三 寺田好江 三宅千恵 内海亜美 角畑由美 杉本幸子
制作 郷由起子 制作補 遠藤清 照明 岡野昌代 音響操作 小池勲
【劇評】江原吉博/テアトロ九月号より
『AEON・アイオーン』は、作者の想像力の広がり、エロチシズムと退廃美、
舞台に溢れる役者たちの猛烈なエネルギーと、どれをとってもまさに驚嘆すべき舞台だった。
「アイオーン」とは。近代神智学運動の開祖マダム・ブラヴァッキーが物質界を創造した最初の霊的存在とみなしたもので、
「教会史」に遺されたアイオーン神話に由来する。
人間の霊魂の究極を細胞内のDNAに求める作者は、アイオーンとは、DNAのことだと解釈する。
舞台は私立愛園学園女子高校の生物教室。
そこにはシンジュウロウという青い蝶を飼育する生物教師青木がいる。
目の中に蝶の卵を産みつけられた彼の妹さくらは、
最後には、さなぎとなり、背中に青い羽根を生じる。
そもそもこの学園自体が奇妙なところで、マダム村松木の物理学を授業の柱とする学校は、
むしろ秘密の宗教団体のようでもある。女子高生誘拐殺人の犯人青木を追ってきた警部も殺されてしまうし。
三島ばりの軍国青年が学園の規則を楯に取って、違反者に総括を加えたりと、舞台には血しぶきが飛ぶ。
SFのようでもあり、メルヘンのようでもあり、猟奇趣味的でもあり、何ともものすごい。
しかも、役者たちの技量もかなりのものだ。
久しぶりにアングラ的といえる舞台を堪能した気がした。これからが大いに楽しみな集団である。
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1992.6.12付 私の記
(千秋楽の翌日1992.6.1より、私は、とあるストーリーを書き出していました。
「プロローグ 19XX年5月 とある組織が、日本に上陸した。
”美しき流れ”の健全なる宇宙秩序を再編成するという至上の理念をかかげ、
集まった人物の国籍は不明、静かなる暗躍を開始していた。」
からはじまるストーリーで、下記は、その第一章『モナド』編の後書きに記したものでした。
そのストーリーは、現在第五章で、STOPしてしまっていますが…。
下記の記述で「これ」と表現しているのは、そのストーリーのことであります。)
『私の中の”AEON”』
私は、いつの頃からか、漠然とした、ある方向性へと向かう好奇心を抱き、そして抱き続けて来た。
それは、様々な形体をとり、それぞれが独立した、相いれないものであるかのごとくにふるまって
私自身をすら、分断させもした。
しかし、何かが燻っていた。何か…何か…何か…
そして、うっすらと、その根底では、ある一点で、繋がっているのではないかという命題に突き当たって来た。
’私’という中に、ある一点に、すべては集約される。
その一点を、見つけ出すことが、最大の興味となりだしたのは、本当にいつの頃であろうか…。
その最大の興味へ向かう好奇心が、また、多くの興味を引き出しては、欲し、
欲しては、引出して…次第にその輪郭が明らかになりつつある。
しかし、その輪郭自体が、また、防護壁の作用をしだし、その核心を、
易々と露呈してくれるというわけには、ゆかなくなって来ているのであった。
この混沌とした、不毛とも言える私の精神作用…
それ自体に、私は、今、命名をすることが出来た。
”AEON”
私の精神作用の象徴であるかのごとく、その演劇は存在した。
私の興味のエレメンツを見事に繋ぎ、それは、存在した。
分散されて、欲していたもののすべてが、そこに、集約されて、存在した。
それは、イコール、まさに、私自身を象徴していたのである。
宇宙・神・美・音楽・精神・血・DNA・さくら・烙印 etc etc
列記には、限りがない。
が、そこで、非常に重要なものが、1つ存在する。
それをも含んだことで、私を象徴する術が、完成されてしまったのである。
それは、私の嫌悪の象徴”いも虫”である…。
欲するものと、欲さないものの対峙、そして、融合…。
私というものが、完成されるとするなら、それは、大いなる啓示でもあったわけである。
だが、それも又、それが完成と呼べるなら…という形で、幕が降りている点が、
より、私を象徴している気がしてならないのである。
そんな意識も、明確にはなっていなかったまま、私は、無意識に、「これ」を書き出していた。
書き出して、進めてゆくうちに…私は、次第に気づいて来た。
私にとって、”AEON”が何であったのかを…。
そして、書き出した時点では、まったく、考えていなかった
”AEON”自体を取り込んでしまうという状況に陥ってしまったのであった。
それも、進めば、進むほど、深みにはまってゆくのである…。
「これ」は、私自身の象徴である。
今の私の象徴である。
私次第の象徴である。
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私なりに、当時、キーワードでまとめた「AEON」
Act.00 死体売買・解体
Act.01 青木と沼田の再会・真珠郎
Act.02 さくらの誕生・兄妹
Act.03 烙印告知・月・夢
Act.04 生物室の生徒達・夢想
Act.05 観察・窓
Act.06 青木・真珠郎
Act.07 青木・木下・悩み・予知夢・闇
Act.08 術・隠蔽
Act.09 観察・生物室・発見・沼田
Act.10 マダム村松木登場・太古の記憶
Act.11 妹さくら・兄青木・いけにえ・愛の力
Act.12 さくら独白・痛み
Act.13 朝礼
Act.14 水島の夢の中・幻想
Act.15 保健室・告白
Act.16 断罪・審判
Act.17 存在・任務・遂行
Act.18 真理・烙印・アイオーン
Act.19 教え・叫び・心
Act.20 水島・青木・思い
Act.21 鱗粉・媚薬
Act.22 生け贄
Acr.23 傷・傷跡・傷 −青木の傷−
Act.24 制裁・喘ぎ −佐伯の傷−
Act.25 さくら −さくらの傷− もう1人のさくら
Act.26 喝・カオス・大志
Act.27 生誕
そしてラスト・シーン
でも、もしも、その子が生きているのなら
人間の女が、蝶の子供を産むという、そんな不思議が、この世に存在するのなら
その子が蝶に変体する前に探してあげたいのです…
きっと、どこかの片隅で、人間のふりをして
人の目に怯えながらも暮しているはずですから…
自分の生い立ちも知らず、奇怪な運命の十字架を背負わされたかわいそうなその子を…
母親として…抱き締めてやらずには、おられないのです…。
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